酒蔵の仕事
株式会社 小嶋総本店
代表取締役社長 小嶋 健市郎さん

●40歳(2020年9月時点) ●米沢市出身 ●米沢興譲館高等学校/慶應義塾大学 総合政策学部 卒 


日本が誇る純米酒を米沢から世界に

インタビュー


 安土桃山時代、慶長2(1597)年創業の、小嶋総本店。米沢の地で受け継がれる日本酒「東光」への想いを、第24代蔵元で代表取締役社長の小嶋さんに伺いました。

米沢城の東側、
朝の光が上る方角の酒「東光」

 今年で創業423年を迎えた蔵元、小嶋総本店。日本において13番目に古く、上杉景勝公が米沢に入部して以降は上杉家御用酒屋とされ、江戸時代の飢饉で米不足になり禁酒令が出された際にも、特別に酒造りを許された数少ない酒屋の一つだったそうです。
 酒名である「東光」は、米沢城の左側、朝の光が上る方角の酒を意味し、地元のみならず県内外のファンに親しまれています。現在では、アジアやヨーロッパ、オーストラリアやアメリカなどにも輸出され、世界各国で愛される日本酒となりました。


他企業での経験を経て、
米沢で更なる成長を目指す

 小嶋さんはいずれ家業を担うことを視野に入れながら、大学を卒業後はマーケティングの仕事がしたいと、大手衛生用品メーカーに就職しました。その後アメリカで輸入卸売を行う企業に入社し、営業を経験。その後30歳で米沢に戻ったそうです。「大きな会社で体感した、会社の仕組みから仕事の在り方、有効な会議の方法、仕事のマネジメントは今に反映されています。海外企業では日本と他国との違いを知り、また英語が話せるようになったことで仕事の幅が広がりました。米沢に戻り10年、あとはここで成長した分しか伸びませんから、頑張らなければと日々努力しています」。
 現在は経済活動の発展のみならず、SDGs(持続可能な開発目標)を掲げ、酒造りを取り巻く環境や、これまで続けてきた地域でのお祭りや清掃活動、文化的貢献なども、自分たちはなぜ取り組んでいるのか社内で整理し、企業姿勢の見える化を進めているそうです。

日本酒から心豊かな時間を届けたい
挑戦し続ける酒造り

 小嶋さんが米沢に戻り初めて手掛けたお酒が、純米吟醸酒の酒粕で造った焼酎をベースにした「東光 吟醸梅酒」でした。2012年、大阪天満宮で開催された梅酒大会に出品すると、全国から集まった300酒以上もの銘柄の中から見事優勝。それを機に、更に全国のお客様との取引が始まったそうです。「酒造りの大きな励みになりました。今でも仕事で近くに行った際には大阪天満宮に立ち寄り、お礼参りをしています」。
 雪の多い地域で造られるお酒は、澄んだ空気から、洗練されたきれいなお酒ができるとのこと。また郷土の食文化に合わせ、奥行きのある味わいも魅力です。2015年、小嶋さんは社長に就任。酒造りの基本となるお米や水、自然の恵みに感謝し、それらの個性を尊重するため、田んぼから酒造りに取り組んでいます。そしてこの春、水源を見てみたいと、最上川の源流である火焔(かえん)の滝のある大平温泉に足を運んだそうです。「こんなにも雄大な自然が米沢にあり、当蔵の源になっているのだと改めて感動しました。そしてお客様にも当蔵のお酒からもっと心豊かな時間をお届けできるよう、私自身まだまだ気付けていない地元の良さを勉強し、紹介していきたいと思ったのです」。

コロナ渦のマイナスを
次なるプラスに

 新型コロナウイルスの影響を受け、2020年4~5月の売り上げは半分にまで落ち込んでしまったそうです。「企業として根本的に考え直す機会になりました」と小嶋さん。国内外の取引先との打ち合わせはオンラインへ。「出張の日数は減りましたが、コミュニケーションはぐっと取りやすくなりました。今後も、オンラインでの打ち合わせは活用されていくでしょう」。
 またこの冬は生産量を調整し、これまで分担していた仕事の垣根を再検討、お互い学び合いながらトライアルをしたいと考えているそうです。「酒蔵によって経営は異なりますが、今年の冬は社員がいろいろな技術を共有し、成長できる冬にしたいと計画しています」。


身近で特別なストーリーをブランドに

 「もう一度原料や酒造りの製法、そして自分たちの歴史や地域の原点に振り返った取り組みをしたいと考えています」。酒蔵に長い歴史があるという事実だけではなく、具体的にどんな起源があって、どんなオリジナリティがあるのか、もっと見える形でブランドの中に織り込んでいきたいと今後について教えてくれました。
 「創業当初酒造りは、北前船で運ばれてきた備前焼の大きな瓶で行われていました。そして当時と同じものを造られる職人さんが数名おり、ご縁で繋がることができました。そこでこの冬もう一度瓶で酒造りをしようと思っているのです」。酒造りと向き合い、それを取り巻く様々なストーリーで彩る小嶋総本店のお酒が、今後も更に格別な味わいを楽しませてくれることでしょう。

わわわQ&A①
~働く仲間と広がる仕事~

小嶋さんはどんな社員の皆さんとお仕事をしていますか?

 異業種から当蔵に仲間入りした社員がおり、コミュニケーションの取り方がとても上手で、熱心に酒造りに取り組んでくれています。また、私が子どもの頃から働いているベテラン社員もおり、様々な蔵の変化を知り、今も一緒に努力していただき、とても信頼があります。
 今年は新入社員と事業開発を行うためのチームをつくりました。SNSで情報発信をしたり、オンラインショップの充実を図ったり、新しいことに挑戦してもらっています。こちら側から指示を出さなくても、自分で考え提案してくれるのでとても頼もしいです。社内にはチームで情報共有をするSNSツールがあり、業務連絡のみならず、気になる情報の交換から、思いついたアイディアなどをすぐに伝えるなど、次なる展開に活かされています。

社員の皆さんに質問です。
社長の小嶋さんはどんな人ですか?

 「酒造りの老舗で、日々新しいことに挑戦する姿に刺激を受けています。しっかりとしたビジョンのもと、米沢という場所にとらわれず進む経営戦略を一緒に考えながら、社員それぞれが成長しているのではないかと思います」と若手社員に慕われる小嶋さん。
 また、約40年酒造りを手掛けるベテラン社員にも「社長は真面目で誠実な方。『挑戦し続けなければ、酒蔵として生き残れない』と言い、よりおいしいお酒を提供したいと、共に開発に情熱を注いでいます。小嶋社長との酒造りは何年やっても新しく、毎日が本当に楽しいです」と期待していました。

わわわQ&A②
~米沢から膨らむわわわな気持ち~

これからについて考える、若者へメッセージをお願いします。

 東京のような大都市は人口が集積した大消費地、一方で米沢は様々な「モノ」「コト」を生み出す生産地だと思います。誰もが最初は華やかな消費文化に憧れつつも、それらを一通り経験すると、生産地に暮らすことに価値を感じる方も増えてくるのではないでしょうか。
 「ここには東京にないものが全部ある」と言ったりしますが、身近に自然があり、産地でしか得られない最高の状態の食材など、ここだけの本物に出会えるのが良いところです。インターネットのお陰で、田舎で暮らすことのハンディキャップは以前よりずっと小さくなりました。さらに米沢は大都市へのアクセスも良いので、産地での暮らしを楽しみながら仕事でも広範囲に活躍する、というスタイルもできると思います。

【企業情報】

株式会社小嶋総本店

992-0037 米沢市本町2-2-3
TEL 0238-23-4848
FAX 0238-23-4863

【事業内容】

  • 日本酒の製造
  • 日本酒の販売
webサイト
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※撮影時のみマスクを外していただきました。
 普段は新型コロナウイルス感染症対策を万全にして業務をされています。