カフェ/ゲストハウスの仕事
Daizy café/Guest House Hataya
オーナー 植松 美穂さん

●43歳(2020年9月時点) ●米沢市出身 ●米沢東高等学校/CICカナダ国際大学 卒 

“当たり前”の本質にある価値への気づきと
さらなるワクワクに向けた歩み

インタビュー


 Daizy Caféの語源は、Daze(ぼーっとする)、Cozy(居心地が良い)、Daily(毎日)を組み合わせた造語。「米沢に、毎日行けるような居心地の良いカフェが欲しい」と2006年に立ち上げました。米沢をフィールドとし、次なる目標に挑戦し続ける植松さんにお話を伺いました。

今日も明日も、ほっと一息
地域で愛されるカフェ

 植松さんがDaizy Caféを立ち上げ14年になりました。店内は11時30分のオープン後、お仕事の途中ランチに立ち寄る方、お友達やカップルでまったりとランチやカフェを楽しむ方、気ままに珈琲をじっくりと味わう年配の方、子どもと一緒にくつろげる別室でママ会をする親子、学校帰りの高校生など、それぞれのカフェ時間を自由に満喫しています。
 人気のカウンター席では、異業種の常連さんが「何か面白いことはできないかな」とアイディアを語り合っていることも。「オープンしたばかりの時はアジアンテイストのカフェでしたが、雪深い米沢に温もりを求めて薪ストーブを入れたり、人気のカウンター席を増やしたり、ずっと手直しをしています」。お店は進化を続けながら地域で愛されています。

海外への憧れ
地元米沢に求めた温もり

 子どもの頃に見たアメリカを舞台にしたドラマに影響を受け、いつかアメリカで暮らしたい、いろんな地域へ出かけてみたいと、海外への憧れが強かったという植松さん。中学生で留学への想いは高まり、家族を説得するも了承が得られず、高校生になり説得するも失敗。大学に進学する際には、半年間毎日土下座をするほど頼み込み、ようやくカナダへの留学を果たすことができました。
 帰国後、東京でアパレルブランドに就職。3年勤めた頃ふと立ち止まり、一旦米沢に戻ることを考えたそうです。「アパレル企業は常に季節を先取り。会社とアパートの行き来ばかりで、いつしか自分がいる場所の季節が感じられず、苦しくなっていたのでしょうね」。そして米沢にUターンし、旅行代理店に勤務します。数年勤め、何をしたいのか立ち返ったときに、もう一度海外に行くか迷いながら、米沢に留まることを決意したそうです。ファミレスではない、米沢にくつろげるカフェが欲しいとの願いから、29歳でDaizy Caféを立ち上げました。

身近な米沢の「当たり前」な魅力

 植松さんがカナダ留学から日本に戻る前、祖父と沖縄へ旅行に行った時のこと。旅先で米沢から来たことを告げると、地元の人々に「私たちは米沢に足を向けて寝られないよ」と歓迎され驚いたそうです。それは米沢藩13代藩主・上杉茂憲が沖縄県令となって力を尽くした歴史にあり、米沢と沖縄の交流が今も続いていることを旅先で知ることになりました。「海外が好きでいろんな所に出かけていたのですが、生まれ育った地元を知らず、恥ずかしかったのを覚えています」。その後米沢に戻ってからは、地域の歴史を調べたり、米沢のご当地検定を受けるなど、改めて学ぶ機会を設けたそうです。
 また、お店では留学生の受け入れや海外からのお客様もあり、米沢の美しさが会話に上がることも多いそうです。植松さん自身も毎朝犬の散歩で、季節ごとに魅せる風景に米沢の良さを実感しているとのこと。「もちろん若い頃の好奇心は大事。自分の子どもにもいろんな世界を知ってほしい。でも、地元の魅力も同じくらい知ってもらえたらうれしいですね。これまでここで生きてきた両親や祖父母が、当たり前のように食べていた郷土の味や地域の行事。それが実は当たり前ではなく、本当に愛おしいものであるということも」。

米沢の風土や文化を体感できる
ゲストハウスの立ち上げ

 カフェの傍ら植松さんが代表を務めるGuest House Hatayaは、両親が暮らす実家を民泊できるように修繕し、米沢の風土や文化を残した環境の中で、人々が交流できる場所にしたいと立ち上げられたゲストハウスです。きっかけは米沢市で行われている「まちづくりプラン大賞」への参加でした。100年以上続く機屋で、もともと4世代が暮していた築57年の家は広く、使用されず物置状態になっている空間に「もったいない」と感じていた植松さん。プロジェクトが見事大賞を受賞するも、実際に修繕を進めると水回りの工事などさらに莫大な費用がかかることがわかり、クラウドファンディングに挑戦。また、地元工業高校の古民家再生授業で教材にしてもらうなど、たくさんの方々の協力を得て、2019年2月にオープンしました。
 日本ならではの茶室や、リビングから愛でる庭園が魅力で、民泊施設を紹介するウェブサイトに登録すると、日本のみならず台湾や中国、イタリアやフランス、ドイツなど世界各国から利用客が訪れ、満足度を計る評価は最高ランクの星5つを得ることができました。「お客様対応を担当しているのは両親です。基本的には米沢の観光案内から、地元ならではの飲食店の紹介をしたりするのですが、その優しい対応にお客様は喜ばれ、旅の途中にお礼の贈り物を送ってくれたり、帰宅後連絡をくれたり。親戚のようなほのぼのとした交流が生まれています」。

ここから生まれる交流と
次への繋がり

 お店の朝は、娘さんを小学校へ送り出した朝7時半過ぎ、ベーグルの仕込みからスタート。その後仕入れを終えたスタッフが10時頃に出勤し、そこから2人で掃除や仕込みに取り掛かり、11時30分に開店します。夕方娘さんがお店に帰ってくると、常連のお客様に「おかえり」と迎えられ、宿題を見てもらうこともあるそうです。
 「ここには都会のような右も左も知らない人、という心細さはありません。米沢という地域から何気ない交流が生まれ、次に繋がれる場所です」。カウンター内にいながらも、様々な業種のお客様に知りたい情報を教えてもらったり、相談に乗ってもらえたり、必要な企業を紹介してもらうなどし、いつも目的にあった情報と人に辿りつくことができるとのこと。コロナ禍で営業を模索する日々も、お客様に「大丈夫?」「何かできることはない?」と声をかけてもらえたことがうれしかったそうです。
 また心掛けているのは、お客様に伝える「他愛もない会話」。「農家さんが直売しているミニトマトが水に沈む話だとか、今日の天気だとか、本当に些細なものです。少しの会話が同じ空間をもっと居心地の良い場所にしてくれるのではないかと思うのです」。8月にはお店を改装、厨房では菓子製造ができるようにし、テイクアウトだけのお客様にも対応しやすく、ネット販売にも取り組める環境を整えました。「今後私が年をとったり、変化は続きますが『今に合ったお店』を常に考え、これからも継続できるカフェを目指していきます」。

わわわQ&A①
~働く仲間と広がる仕事~

植松さんはどんなスタッフの皆さんとお仕事をしていますか?

 日中働いてくれるスタッフと、夜やお休みの日に手伝ってくれるアルバイトの学生さんがいます。シフト制ですが、私が会議や急用などで外に出なければいけなくなっても、しっかりお店を運営してくれる頼もしい方々ばかりです。困った時には休みの日でも「買い物だけでも行きますよ」と駆けつけてくれたり、本当にありがたいです。私がお父さん、日中のスタッフがお母さん、学生は子ども達、というような関係。家族のように温かい職場です。

スタッフの皆さんに質問です。
オーナーの植松さんはどんな人ですか?

 植松さんは頼りがいがあって、さばさばとした性格ですが、実はおっちょこちょい。人間味があり、お客様に慕われる様子がよく分かります。新型コロナウイルスの影響で学校が休校になった際には、子どもと一緒に出勤させてもらいました。また夏休みも同様に。子どもがいるとなかなか働きにくい時もありますが、植松さんは私たちの状況を理解し、働きやすい環境を考えてくれ、本当にうれしく感じています。

わわわQ&A②
~米沢から膨らむわわわな気持ち~

これからについて考える、若者へメッセージをお願いします。

 若い頃はなぜだか東京や海外への憧れは大きいものです。憧れや興味を大事にしながら見聞を広めることは大切です。そして自分自身に立ち返り、進みたい道や残したいものなど自分の生き方を考えることも大事だと思います。
 結婚し、子どもができたなら、どんな未来を子どもに見せることができるのか。私は日頃、米沢という狭い世界ならではの温かな助け合いのうれしさを感じています。外の世界の刺激と内側の温かさ。ずっと向上心を持って、より良い方に変えていくことができたなら、憧れで終わることのない、自分の納得のいく生き方ができるのではないでしょうか。

【企業情報】

Daizy café

992-0045米沢市中央2-8-36
TEL/FAX 0238-22-3222

Guest House Hataya

992-0022 米沢市花沢町1-9-45
TEL/FAX 0238-22-3222

【事業内容】

  • カフェの運営
  • ゲストハウスの運営
webサイト


※撮影時のみマスクを外していただきました。
 普段は新型コロナウイルス感染症対策を万全にして業務をされています。